安倍首相:まず冒頭、全国各地の医師、看護師、看護助手、病院スタッフの皆さん、そしてクラスター対策に携わる保健所や専門家、臨床検査技師の皆さんに、日本国民を代表して、心より感謝申し上げます。新型コロナウイルスとの戦いのまさに、最前線で、強い責任感をもって、今この瞬間も、一人でも多くの命を救うため、献身的な努力をしてくださっていることに、心からの敬意を表したいと思います。世界全体ですでに、6万人以上が死亡した、この過酷なウイルスとの戦いにおいて、確かな技術と高い使命感を持った医療従事者の皆さんの存在は、私たち全員を勇気づけてくれるものであす。本当にありがとうございます。感染リスクと背中あわせの厳しい状況も恐れず、ベストを尽くしてくださっている皆さんを支えるため、できることは全てやっていきたい。医療現場を守るため、あらゆる手を尽くします。感染予防に欠かせない、医療物資について、国内での増産を進めています。電機メーカーなど異業種の力も借りながら、さらに、提供体制を強化していきます。軽症者や症状のない感染者の皆さんは、医療機関ではなく、宿泊施設などで療養をいただくことで、医療機関の負担を軽減します。ホテルチェーンにご協力をいただき、関東で1万室、関西で3000室を確保しました。日本財団も臨時の施設建設を進めてくださっています。これらを活用させていただき、医療支援法を重症者対応に振り向けることで、病院の機能維持を図ります。
ただこうした努力を重ねても、東京や大阪など都市部を中心に、感染者が急増しており、病床数は明らかに限界に近づいています。医療従事者の皆さんの、肉体的、精神的な負担も大きくなっており、医療現場はまさに危機的な状況です。現状では、まだ全国的かつ急速な蔓延には至っていないとしても、医療提供体制が逼迫している地域が生じていることを踏まえれば、もはや時間の猶予はないとの結論に至りました。この状況は国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがあると判断いたしました。本日はこの記者会見に、尾身先生にも同席いただいておりますが、先ほど諮問委員会のご賛同も得ましたので、特別措置法第32条に基づき、緊急事態宣言を発出することといたします。対象となる範囲は、関東の一都三県、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県。関西の大阪府と兵庫県。そして、九州の福岡県であります。最も、感染者が多い東京都では、政府として今月中を目途に、五輪関係施設を改修し、800名規模で軽症者を受け入れる施設を整備する予定です。
今回の緊急事態宣言に伴い、必要があれば、ここに自衛隊などの医療スタッフを動員し、特別措置法48条に基づく、臨時の医療施設として活用することも可能であると考えています。医療への負荷を抑えるために最も重要なことは、感染者の数を拡大させないことです。そしてそのためには何よりも、国民の皆様の行動変容、つまり行動を変えることが大切です。特別措置法上の権限もあくまで都道府県の知事が行使するものでありますが、政府として、関東の一都三県、大阪府と兵庫県。そして福岡県の皆様には、特別措置法45条第1項に基づき、生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう要請すべきと考えます。事態は切迫しています。東京都では、感染者の累計が1000人を超えました。足元では、5日で2倍になるペースで、感染者の増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります。しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。そうすれば、爆発的な感染者の増加を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性も出てくると考えます。その効果を見極める期間も含め、ゴールデンウィークが終わる5月6日までの1か月に限定して、7割から8割削減を目指し、外出自粛をお願いいたします。繰り返しになりますが、この緊急事態を1か月で脱出するためには、人と人との接触を、7割から8割削減することが前提です。これは並大抵のことではありません。
これまでも、テレワークの実施などをお願いして参りましたが、社会機能を維持するために必要な職種を除き、オフィスでの仕事は原則自宅で行うようにしていただきたいと思います。どうしても出勤が必要な場合も、ローテーションを組むなどによって、出勤者の数を最低7割は減らす、時差出勤を行う、人の距離を十分にとるといった取り組みを実施いただけるよう、全ての事業者の皆様にお願い致します。レストランなどの営業にあたっても、換気の徹底、お客さん同士の距離を確保するなどの対策をお願いします。学校休校が長期化しますが、オンラインなどで学習できる環境整備を、地域と協力して加速します。電話、オンラインでの診療も、初診も含めて解禁することとしました。病院での感染リスクを恐れる皆さんに、これを積極的に活用いただくことで、受診を我慢するといった事態が生じないようにします。その上で、生活必需品の買い物など、ま、どうしても外出する場合には、密閉、密集、密接、3つの密を避ける行動を徹底していただくよう、改めてお願いいたします。今まで通り、外に出て散歩をしたり、ジョギングをすることは何ら問題ありません。他方で、3つの密がより濃厚な形で重なる、バー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウス、への出入りは控えてください。集会や、イベントを避け、飲み会はもとより、家族以外の多人数での会食も行わないようお願いをいたします。
この感染症の恐ろしい点は、発熱などの症状が全く無いにもかかわらず、感染している人が多いことです。そして知らず知らずのうちに、周囲の人にうつしてしまうことで、拡大していくという点です。既に、自分は感染者かもしれない、という意識を特に、若い皆さんを中心に、すべての皆さんに持っていただきたい。外出する際にも、人混みを避け、他の人との距離を保つ。飛沫を飛ばさないようにマスクをつける、などの行動をお願いいたします。そのことが、他の人の命を守ることになります。そしてひいては、自分の命を守ることになります。国民の皆様の、ご協力をお願いいたします。
緊急事態としての措置を講ずる以上、当然経済活動への大きな影響は避けられません。もとより、今でも多くの中小、小規模事業者の皆さんが、事業継続に大きな支障を生じておられます。世界経済だけでなく、日本経済が今まさに、戦後最大の危機に直面している、そう言っても過言ではありません。その強い危機感のもとに、雇用と生活は、断じて守り抜いていく。そのためにGDPの2割にあたる、事業規模108兆円、世界的にも最大級の経済対策を実施することといたしました。困難に直面しているご家族や、中小、小規模事業者の皆さんには、総額6兆円を超える現金給付を行います。一世帯あたり30万円に加え、次の児童手当支払いに合わせ、一人あたり1万円を追加することで、お子さんの多いご家庭の家計もしっかりと下支えします。日本経済を支える屋台骨は、中小、小規模事業者の皆さんです。本当に苦しい中でも、いま歯を食いしばって頑張っておられる皆さんこそ、日本の底力です。皆さんの声は、私たちに届いています。皆さんの努力を決して無にしてはならない、その思いのもとに史上初めて、事業者向けの給付金制度を創設しました。売上が大きく減った中堅、中小法人に200万円。個人事業主に100万円支給します。固定資産税も減免します。消費税などの納税に加え、社会保険料の支払いは1年間猶予いたします。当然延滞金はかかりません。26兆円規模の猶予を実施することで、手元資金を事業継続のために回していただけるようにいたしました。民間の地方銀行、信用金庫、信用組合でも、実質無利子、無担保、最大5年間元本返済据置の融資が受けられるようにします。さらには、雇用調整助成金の助成率を過去最大まで引き上げるなど、考えうる政策手段を総動員して、国民の皆様とともに、この戦後最大の危機を乗り越えていく決意であります。
今回の緊急事態宣言は、海外で見られるような都市封鎖、ロックダウンを行うものでは全くありません。そのことは、明確に申し上げます。今後も、電車やバスなどの公共交通機関は運行されます。道路を封鎖することなど、決してありませんし、そうした必要も全くないというのが、専門家の皆さんの意見です。海外では、都市封鎖にあたり、多くの人が都市を抜け出し、大混乱と感染の拡大につながったところもあります。いま、私たちが最も恐れるべきは、恐怖、それ自体です。SNSで広がったデマによって、トイレットペーパーが店頭で品薄となったことは、皆さんの記憶に新しいところだと思います。ウイルスという見えない敵に、大きな不安を抱くのは、私も皆さんと同じです。そうした時、SNSは本来、人と人の絆を深め、社会の連帯を生み出すツールであり、社会不安を軽減する大きな力を持っていると信じます。しかし、ただ恐怖にかられ、拡散された誤った情報に基づいて、パニックを起こしてしまう。そうなると、ウイルスそれ自体のリスクを超える甚大な被害を、私たちの経済、社会、そして生活に、もたらしかねません。専門家の皆さんの見解では、東京や大阪での感染リスクは、現状でも不要不急の外出を自粛して、普通の生活を送っている限り、決して高くない。封鎖を行った海外の都市とは全く状況が異なります。ま、ですから、地方に移動するなどの動きは厳に控えていただきたい。地方には、重症化リスクが高いといわれている高齢者の皆さんもたくさんいらっしゃいます。その感染リスクを高めることのないよう、お願いいたします。当然、社会機能はしっかりと維持してまいります。自治体とも協力しながら、電気、ガス、通信、金融、ゴミの収集、焼却など、暮らしを支えるサービスは、平常通りの営業を行っていきます。高齢者の介護施設や保育所などで働いておられる皆さんにも、サービスを必要とする方々のため、引き続きご協力をいただくようお願いいたします。食品など、生活必需品の製造、加工に関わる皆さん。物流に携わる皆さん。そして、小売店の皆さんには、営業をしっかりと継続していただきます。ですから皆さんにはどうか、正しい情報に基づいて、冷静な行動を心よりお願い致します。
この2ヶ月で、私たちの暮らしは一変しました。楽しみにしていたライブが中止となった。友達との飲み会が取りやめになった。行きたい所に行けない。みんなと会えない。かつての日常は、失われました。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています。お一人お一人のご協力に、心より感謝申し上げます。率直に申し上げて、政府や自治体だけの取り組みでは、この緊急事態を乗り越えることはできない。これは厳然たる事実です。感染者の爆発的な増加を、回避できるのか。一人でも多くの重症者を死の淵から救うことができるのか。皆さんをそして、皆さんが愛する家族を守ることができるのか。全ては皆さんの行動にかかっています。改めて、ご協力をお願いします。
全く先が見えない大きな不安の中でも、希望は確実に生まれています。日本中、世界中の企業、研究者の英知を結集してワクチン開発、治療薬の開発が進んでいます。新型インフルエンザの治療薬として承認を受け、副作用なども判明しているアビガンはすでに、120例を超える投与が行われ、症状改善に効果が出ている、との報告も受けています。観察研究の仕組みのもと、希望する患者の皆さんへの使用を、できる限り拡大していく考えです。そのために、アビガンの備蓄量を現在の3倍、200万人分まで拡大します。国内での増産に必要な原料の生産には、各地の企業が協力を表明してくださっています。自動車メーカーは、人工呼吸器の増産を手助けしてくれています。欠航が相次ぐエアラインの皆さんは、医療現場に必要なガウンの縫製を手伝いたいと申し出てくださいました。学校が再開する子どもたちのために、手作りマスクを届けようとしている皆さんがおられます。スーパーを生活必需品で満たすため、昼夜を分かたず、いまこの瞬間も、物流を守り続けるトラック運転手の皆さんがいます。医療現場のため、自分たちができる支援をしたいと、クラウドファンディングを始めた皆さんがいます。看護協会は、5万人を超える、現在現場を離れている看護師の皆さんに協力を呼びかけています。私からも是非お願いをしたい。これ国家的な危機にあたり、ウイルスの戦いに、皆さんのお力をお借りしたいと思います。実際、看護協会の呼びかけに応じ、既に命を救うため、命を守るため、医療現場への復帰を申し出てくださっている方々がいらっしゃいます。あらゆる分野で、この危機にできる限りのことをやろうと、全国で立ち上がってくださっている皆さんがいる。これこそが、希望であります。9年前、私たちはあの、東日本大震災を経験しました。たくさんの人たちが、かけがえのない命を失い、傷つき、愛する人を失いました。辛く、困難な日々の中で、私たちに希望をもたらしたもの、それは、人と人の絆、日本中から寄せられた、助け合いの心でありました。今また私たちは、大きな困難に直面しています。しかし私たちは、皆で共に、力を合わせれば、再び希望を持って、前に進んでいくことができる。ウイルスとの戦いに打ち勝ち、この緊急事態という試練も、必ずや乗り越えることができる。そう確信しています。私からは以上であります。
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